インプラント治療について
歯を失った部分に純チタン製のスクリュー(人工歯根)を埋め込み、その上に人工の歯や入れ歯を取り付ける方法を「インプラント」と言います。
チタンは人工股関節などの医療分野で長く使用されている非常に生体に優しい素材で、金属アレルギーの心配もほとんどありません。
インプラントは「第2、3の永久歯」と言われるほど、機能的にも見た目にも、天然の歯の状態に近付けることが出来ます。
歯を失った部分の治療法は両隣の歯を削って連結している差し歯を入れる「ブリッジ」、残っている歯に留め金を掛けてご自身で取り外しをする「入れ歯(義歯)」がありますが、それぞれに利点と欠点があります。
インプラントは他の治療方法に比べて
などのメリットがあります。
歯がなくなった場合に第一選択となる、歯を作る治療方法です。
- 歯科用インプラント手術器具
- サージカル・テンプレート
インプラント治療のメリット
よく噛めるので若さ、健康を保持出来ます
ブリッジや入れ歯は噛む部分(歯冠)のみを作るため、歯ぐきや他の歯に負担が大きくかかり強く噛むことが出来ません。しかし、インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め、土台となりますので、自然な感覚が得られます。(天然歯の約80%程度の噛む力が戻ります)入れ歯のように顎の骨の減少なども少なく、健康的で見た目に関しても若々しさが保てます。
周りの歯や歯周組織を傷めない
ブリッジのように隣の健康な歯を削るなど、支える歯や歯周組織に影響を与えることはありません。
優れた耐久性
チタンは工業的にも優れた耐久性で、歯の部分はセラミックなどの差し歯が入るため、虫歯にはなりません。ご家庭でのきちんとしたお手入れと、定期検診時にしっかりとメンテナンスを行うことで、半永久的にインプラント治療の効果が続きます。
審美性が向上
特に前歯を失った方にはお薦め致します。
入れ歯は留め金が見えると目立ちます。また差し歯が連結してできているブリッジも不自然に見えることがあります。
インプラントはお一人ずつのオーダーメイド治療で、歯の色や形もある程度は対応することが出来ます。
インプラント治療のデメリット
健康保険が適用されません
インプラント治療は健康保険対象外のため高額な費用がかかってしまいます。またインプラントを埋める本数、付随する治療によっては検査、材料、薬品などにコストがかかります。ですが、医療費控除の対象になりますので、確定申告をすれば還付金を受けることが出来ます。
外科的な手術が必要
この「手術」という言葉のために、インプラント治療に踏み込めない方が多くいらっしゃると思います。基本的には抜歯程度の手術になりますので、必要以上に不安を抱くことはありません。
治療後のメンテナンスは必須
すべての方々にとって口腔ケアは大切ですが、特にインプラントでは快適に長く使い続けて頂くために、定期検診と患者様ご自身の毎日のプラークコントロールが必須となります。
定期検診ではレントゲン撮影や咬み合わせ、清掃状態のチェックを行います。
インプラント治療の流れ(2回法の場合)
- 1.問診
- 治療計画を立て、お口全体の問題を検査し診断致します。インプラント治療を受けたい理由やご要望などを伺います。
- 2.検査
- 歯科CTによる撮影、歯を失った原因の検査、顎の骨の状態、歯ぐきの厚みなどの状態を調べます。場合によっては全身状態の把握のために血液検査を行うこともあります。
レントゲンで骨量、骨質、骨形態などを精査致します。
最終的な治療計画、見積もりを提示させて頂きます。 じっくりご検討頂き、患者様に納得して頂いてからインプラント治療を開始致します。
- 3.治療
- インプラント手術の前に虫歯や歯周病の治療を致します。場合によっては抜歯部分の治癒を待つために、数か月待ってからインプラント埋入手術を行います。
中には抜歯即日埋入を行うことが出来るケースもあります。
- 4.第1次手術
- 第1次手術では、健康状態を調べて手術を受けられるかどうかを確認した上で、滅菌された環境で行います。歯や歯肉、舌の清掃・消毒をして麻酔を致します。
歯を失った部分にインプラントを埋め込む手術を行います。埋め込む本数によりますが、1本の場合は手術時間は1時間~2時間ほどです。
- 5.インプラントが骨と馴染むまでの治療期間
- インプラントが骨と馴染むまでの期間、手術翌日には消毒のため、約1週間後には抜糸のために来院して頂きます。手術後数日間は抗生剤や炎症を抑える薬を服用して頂きます。
目安として上顎にインプラントを入れた方は3~6か月、下顎ならば3か月ほどですが、患者様の口腔内の状態によって異なります。
- 6.第2次手術
- 第2次手術とは、最終的に被せる人工の歯の土台となるアバットメントを装着する手術です。局所麻酔をして歯ぐきを切り、埋め込んでいたインプラントの頭の部分を露出させます。
この段階で骨としっかりと結合しているかを確認致します。歯ぐきから少し露出する背の高いヒーリングキャップをインプラントに付け替えます。
- 7.被せる歯の作成
- 被せる歯の作成1週間後位に型取りを致します。場合によってはインプラントとの装着具合をチェックするために、確認の工程(試適)を行います。
完成後、お口の中に歯を装着し治療工程の終了です。
- 8.メンテナンス
- お口の健康維持と長期的なインプラント使用のために、専門の歯科衛生士による衛生指導と歯科医師による1か月、3か月、半年、1年後の定期検診を受けて下さい。
インプラントの良くある質問
- インプラント治療は痛くないですか?
- 顎骨に打つというのを想像するととても痛そうですが、実際にはそれほど痛みを感じることはありません。骨自体にはそんなに敏感な感覚はありません。顎骨は発生学的にも感染にとても強い組織なので、実は口の中に露出していてもあまり痛みません。
また、術中は麻酔をしっかり行うので痛みは感じません。術後麻酔がきれると痛みを感じますが、痛み止めを処方しますので、特に心配はありません。
- 手術時間はどのくらいですか?
- 本数や部位によりますが、30分~1時間程度です。
ただし、準備などがあるので医院にいる時間は2~3時間程度になります。
処置後は普通に帰宅することが出来ます。
- 治療期間はどのくらいですか?
- 骨と埋め込んだインプラントがしっかりと馴染むまで一定期間が必要です。
上顎は骨がやわらかい性質があるので3~6か月、下顎は3か月という比較的長期間となります。
その期間は仮歯や仮の入れ歯を使用して頂きます。
- インプラントはどのくらいもちますか?一生ですか?
- 現在の治療法としては一番有効で成功率の高いものに位置付けられていますが、残念ながらどの治療も100%の成功率というものではありません。
お口の中の環境はとても過酷なため、天然の歯より長持ちするかというと疑問です。
ただし、現在インプラントは進化し続けているので、今後もっと良いデーターが出てくる可能性もあり、実際に条件が整えば一生もつと言う報告もあります。
- インプラント治療は誰でも受けられますか?
- 全身状態や骨の状態によっては適用出来ないことがあります。
糖尿病、腎不全、肝炎、心臓病、骨粗鬆症、高血圧、妊娠中の方、重度の歯周病の方、ヘビースモーカーの方などはインプラント治療が制限される場合があります。
また、歯を抜いた状態が長期間の方は埋め込む土台となる骨の高さや幅がない場合があり、適用が難しくなる事もあります。
- 保険診療が適用にはならないのですか?
- 残念ながら今のところ難しいと思います。
保険診療は現状、拡大よりも縮小傾向にあります。今後も保険診療が適用される状況には成り得ないのではないのでしょうか。